
スポーツビジョン研究会 真下一策
スポーツでは周囲の状況の変化に瞬間的に対応する能力が要求されています。
その対応の上手・下手が競技力に大きく関係しているのです。周囲からの情報は
主に眼(視覚能力)を介して脳に入力されていますが、この視覚能力には大きな
個人差があります。スポーツビジョンでは視覚能力を8つの機能で測定して競技
力との関係を分析します。
8つの機能とは、@静止視力AKVA動体視力BDVA動体視力Cコントラスト感度
D眼球運動E深視力F瞬間視G眼と手の協応動作、の8つです。
分析の結果、競技力の優秀な選手は優秀な視覚能力を有することが分かりまし
た。テニスでは野球と同じく、2つの動体視力をはじめ全体的に高い視覚能力が
必要でした。
視覚能力が競技力に影響を与えているならば、視覚能力を高めて競技力を向上さ
せようとする考えが出てきます。静止視力は最も基本的な視覚能力ですが、トレー
ニングで良くすることはできません。従って、静止視力の不足には視力矯正(眼鏡
やコンタクトレンズなど)が必要になりますが、正しく矯正するだけで幾つかの関
連する視機能も自動的に良くなるのです。他の機能の多くは、時間がかかります
が、トレーニングできます。このように、視覚能力を高めることは可能なのです。
では、視覚能力を向上させれば直ちに競技力も向上するのでしょうか?
視覚能力を高めることは情報収集力を強化することに他なりません。質と量の向
上した情報を競技力に反映させるには、その情報を的確に処理する優秀な判断力が
必要となります。それがないと「以前より良く見えるようになったけれど競技力は
変わらない状態」にとどまります。
優秀な選手というのは、優秀な視覚能力と、それによって得られる情報を活用で
きる優秀な判断力を持つ選手のことなのです。視覚能力と判断力、これが競技力を
支える両輪となります。この両輪を効果的にトレーニングしなければなりません。
若い選手を指導する時は、視覚能力に不足はないか、判断力の不足はないか等に常
に注意を払 う必要があります。

第7回テニスメディカルセミナーは、スポーツヴィジョン
いわゆる動体視力に関するもので、大変興味深いもの
となりました。
スポーツヴィジョンの研究は、野球等で進められて
きていますが、テニスにおいてはまだデータがない
状況です。当委員会は、これを機会にスポーツヴ
ィジョンに関して検討して行く予定であります。
※テニスメディカルセミナーの様子。
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