ジュニアの腰痛
東京医科歯科大学 名誉教授 四宮 謙一
ジュニア時代に発生する腰痛で選手生命に影響する疾患として、腰椎分離症と腰椎椎間板ヘルニアがあります。
腰椎分離症は成長期に発生する椎弓の疲労骨折で、ストレスが集中する第5腰椎に多くみられます。初期の腰椎分離症ではコルセット等の外固定により骨癒合が得られますが、多くは気づかれることなく偽関節に移行します。成人では約6%の有病率ですが、プロ野球選手を例に挙げると20%以上が腰椎分離症といわれています。分離症があってもプロレベルに到達できた一方で、腰痛が原因で引退する選手がいることも現実です。小児期では、分離症の時期、年齢、症状の強さ,テニスレベル等を考慮して、保存治療を選択することが多いようです。
次に腰椎椎間板ヘルニアですが、成人では椎間板の中心にあるゲル状の髄核が後方の脊柱管に向けて膨隆する病態です。成長期では椎間板上下の成長軟骨にも損傷が起こり、椎間板と軟骨が一塊として後方に膨隆することもあります。腰痛の持続や神経症状が強い場合には摘出手術を選択しますが、基本的には保存的治療を選択します。
略歴
1972年3月
東京医科歯科大学医学部卒業
1982年1月
済生会川口総合病院整形外科部長
1987年1月
東京医科歯科大学医学部整形外科学講座講師
1994年5月
Vanderbilt Univ. Visiting Professor
1996年11月
東京医科歯科大学医学部整形外科学講座教授
2010年7月
横浜市立みなと赤十字病院院長
2017年12月
国立印刷局診療所管理者 (2022年11月現在に至る)