私は、昭和大学整形外科に入局して以来、脊椎由来の痛みを治療する研究を行ってきました。中でも腰痛は国民病とも言われ、シニア世代の殆どの方が経験する病態です。一方、我が国のスポーツ習慣の高まりは、昨年の2020東京オリンピックでさらに加速し、シニア世代のテニスプレーヤーやマラソンランナーが急増しております。
　私自身もテニス、マラソン、トライアスロンを愛好しており、腰椎椎間板ヘルニアで内視鏡による手術を経験しております。内視鏡による脊椎手術は、1990年代に私を含む数名の脊椎外科専門医が世界をリードして開発してきた技術です。最新の技術では局所麻酔だけで日帰りでも実施できるほどの技術革新に至っています。日本の超高齢化社会において、本技術によって最小侵襲治療を行えるメリットは計り知れないものがあります。
　さらに近年、手術以外の治療法が開発されています。椎間板内にヘルニアを融解する酵素を注射する椎間板内酵素注入療法は、2年前に保険承認された日本で開発された治療法です。また、外来診療で有望な治療法が開発されています。日本が誇る高性能の超音波診断装置（エコー装置）によってレントゲンや造影剤を使用せず、無害なエコー装置の誘導によって腰痛を引き起こす神経のブロック治療が可能になっています。最新の体外衝撃波装置を用いた腰痛治療は、従来の電気治療を遥かに圧倒する成果を上げています。
本セミナーの講演では、スポーツ選手の早期復帰を可能にしているこれら最新治療法について、私自身が病院で実施している症例を提示させていただきます。